カテゴリー「慣用句」の7件の記事

2017年9月23日 (土)

035 尻に目薬 (慣用句)

見当違いの例え。
敢えて難しいことに挑戦する気概を称えること。


【解釈】
滴下型の下剤や外用水虫薬を、間違えて点眼してしまった医療事故は記憶に新しいが、そのことは同時に新たな脅威を予感させることにもなった。
それが目薬の注腸行為である。
そんなバカな、と思われるかもしれない。しかし考えてみて欲しい。ラキソベロンを点眼した、あるいはラミシール外用液を点眼した、そんな事故を耳にしたときも、「そんなバカな」と感じたのではないだろうか。

人は時としてあり得ないことをしてしまうのである。
いつの日か、サンコバ点眼液を尻から注入したとしても何らおかしくない。サンコバの点眼容器に、【禁注腸】と記載してあるだろうか。添付文書に、【本剤はくれぐれも尻から注入しないこと】と記載されてあるだろうか。
我々薬剤師は、早急に
【これは点眼するものであって、お尻に注さないで下さいね】という服薬指導を盛り込むべきかもしれない。

.
世の流れと言ってしまえば元も子もないが、モンスターと呼ばれる輩が世に蔓延って久しい。そうした人は、自己判断能力が極めて希薄、あるいは一般的な解釈とは大きく外れた判断をする傾向にある。
「お尻から入れちゃいけないなんて、説明されなかった」
「点眼なんて言われても、素人にはわからないわよ」
彼らに常識は通用しない。そして世間もまた、モンスターに屈する風潮がある。言ったもん勝ち、とはこのことだ。彼らの言うことに従うから、次から次へとそういう連中が湧いてくる。
.
今からでも遅くない。心の備えをしておこう。
・尻に注入した目薬は感染リスクがあるため再利用しないこと
・健康被害は考えにくいが、念のため下痢や腹痛がないか経過をみること
を指導しよう。そして、「目に見えない場所に目薬を入れるのは大変だったでしょう、よく頑張りました」と笑顔でその気概を称える余裕を見せたいところだ。

.


人気ブログランキングへ

2016年12月25日 (日)

030 胃痛にバファリン (慣用句)

悪いことにさらに追い打ちをかけて悪いことが重なる意。踏んだり蹴ったり。

【解釈】
同義として「泣きっ面に蜂」がある。

NSAIDsは鎮痛剤として広く使用されているが、PG阻害による胃症状の副作用が知られている。痛み止めだから、胃の痛みにもきっと効果があるだろうとバファリンを服用し、余計に胃痛をこじらせてしまったという悲劇から派生した慣用句である。
.


人気ブログランキングへ

2016年2月 7日 (日)

025 風邪にフロモックス (慣用句)

無駄な努力、無意味な言動を指す。


【解釈】
既存のことわざで「猫に小判」「豚に真珠」などがある。

二次細菌感染でも引き起こしていない限り、流行性感冒、一般にいうかぜに抗生物質は不要である。抗生物質による有害事象の可能性や、耐性菌発現の危険を考えると、投与すべきではない、とするのが一般的見解になりつつある。ところが一部の医師には、二次感染の予防のためと抗生物質、特に広域のセフェム系を出す例が散見される。多くの場合で治療は成功するが、それは抗生剤が効いたためではなく、自然治癒である。
一方で、生半可な知識を得た患者側のほうで、「念のため抗生剤を出してください」などと希望を出す例もあり、後々のトラブルを避けるため仕方なく希望に沿ってしまう、ということもあるようだ。


【新解釈】
こうした患者に抗生剤の無意味さを説くため、「豚に真珠を差し上げるようなものですが良いですか?」という確認をすると、大半の患者は鼻の穴を膨らませ「ならいいです」と断ってくれるようだ。


人気ブログランキングへ

2016年1月12日 (火)

020 漢方薬が著効 (慣用句)

思いもしなかった幸運が舞い込むこと。
ダメ元の行為が、結果的に良い方向に転がること。


【例文】
① まさかあの患者さんに――するとは思いもしませんでした。
② ――することだってあるんだから、希望を捨てずに頑張ろう。


【解説】
同義に、<棚からぼたもち>がある。
多くの漢方薬は古くからの経験や「証」という一風変わった概念をもとに使用されるため、エビデンスを重要視する西洋医学とは考えを異とする。
効果があるかはわからないけど、ひとまず不穏だから抑肝散を試してみようとか、トイレが近いから八味地黄丸で経過を見ようとか、言葉は悪いがお試し感覚で漢方薬が使用されることも多い。見方を変えれば、効果がはっきりしない、どういう症例に使ったらいいのかよくわからない、というにも関わらず現代医学でもしっかり使用されている漢方薬という存在は驚異とも言えるのである。


【新解釈】
飲む側の心構えで効果が変わってくることもある。漢方薬は効くと思えば効く、効かないと思えば効かない。
信じる者は救われる、と言わんばかりの東洋の神秘に、漢方薬は別名<飲む宗教>とも呼ばれ崇められているという。


人気ブログランキングへ

2015年12月26日 (土)

015 カルデナリン、ガイドラインから外れたってよ (慣用句)

新しい知見とともに物事が移り変わっていくさま。
多くの場合、そこに悲哀の念を含む。

.
【解説】
同義に、「ダ―ゼン、販売中止されたってよ」がある。

α遮断薬は血管拡張というそのわかりやすい作用機序から、かつては降圧治療の重要な役割を担っていた。
ところがカルシウム拮抗薬に加え、腎保護や心保護という目に見えない売り文句を武器にACE阻害剤やARBが市場に参戦してくるに伴い、状況は厳しくなってきた。
さらに高齢者に用いることが多い中で、起立性低血圧という副作用は使いにくく、やがてカルデナリンは肩身の狭い思いを強いらるようになる。

かつては肩を並べ活躍してきた、同業者であるβ遮断薬までも、現在では心不全治療へとその活躍の場をシフトさせ、見事に成功を収めている。時代の波に取り残された老兵とも言えるα遮断薬は、こうして降圧治療の第一線を退くこととなったのである。

.
【新解釈】
歳を追うごとに使用頻度が減らされていくカルデナリンの行く末を想い、かつての活躍を知っていた薬剤師は皆、小声でその真偽を確かめるように当セリフを囁き合ったという。


人気ブログランキングへ

2015年12月 9日 (水)

010 とりあえずデパス (慣用句)

難解な問題にぶち当たった時に、とにかく楽をして乗り越えたいとする心理のこと。
考えることを放棄したさま。


【例文】
① 501号室の方、痛みが治まらないので、――の方針でいきましょうか。
② ――で始めた治療だったが、結果的に治癒したようだ。


【解説】
デパス(エチゾラム)はベンゾジアゼピン系に分類される抗不安剤であり、不安症や心身症に適応を持つ。その切れ味の良さから様々な場面で頻用される薬剤であるが、困ったときにとりあえずデパスを投薬して様子をみようとする安易な考えも散見される。
身体的異常がみられず正確な診断が付かない場合に、「まあ気持ちの問題でしょう」と安定剤を処方して経過をみるわけだ。

こんなことをしているのでは、医療者側がさじを投げていると思われても仕方がないが、この経験的な治療が功を奏すことも驚くほど多い。悩まされていた狭心痛が落ち着いた、お腹のシクシクする痛みが治った、そんな声を聞くたびにデパスの偉大さを思い知らされる。


【新解釈】
多くの場合、気持ちの問題という人間の神秘に、我々はデパスという架け橋無しでは歩み寄れない。<とりあえず>デパス、という心理には、そんな己の無力さを痛感している医療者の悔しさが滲み出ているのである。


人気ブログランキングへ

2015年11月30日 (月)

005 三年目のコアリング (慣用句)

慣れた頃に危険は訪れる、どんなに熟練の者でも失敗する、という意。


【使用例】
① ――にならないように、気を引き締めて業務を行なっていきましょう。
② お前が――なんて珍しいな。


【解説】
同義に<猿も木から落ちる><河童の水流れ><弘法にも筆の誤り>がある。

「不器用なら薬剤師になれ」と昔の偉人が言い遺したかどうかしらないが、医師にとっての手術や、看護師にとっての採血など、技術が必要とされる業務は薬剤師業界にあまりなかった。せいぜいヘラを用いて散剤を均す程度のものだったろう。
ところがTPN製剤や抗癌剤の混合調製業務が当たり前のように参入し、薬剤師にも一定の技術が求められる時代となった。あまりに能率を優先し過ぎたり、ミスするはずがないと慢心を抱いたりすると、コアリングや針刺しという悲劇になりかねない。

これを危惧した日本医療事故防止委員会の会長が昨年度、「浮気と違い、例え3年目であってもコアリングは許されるものではないということを肝に銘じてほしい」と発言しツイッターが炎上したことは記憶に新しい。


【新解釈】
なお、これが<三年目のコアリング>ではなく、<三十年目のコアリング>になると、慢心をたしなめる慣用句ではなく、満身創痍を称える慣用句へと、その意味合いを大きく変えるのである。


人気ブログランキングへ

その他のカテゴリー