カテゴリー「医薬品」の6件の記事

2017年9月21日 (木)

034 セントジョーンズワート

 ハーブ業界ではややマニアックかもしれないが、薬剤師業界において一躍有名となったセントジョーンズワート。詳細は釈迦に説法であるが、一部の薬剤の代謝を促進し、血中濃度を低下させるため併用に気を付けましょう、というものだ。

 とはいえ、服薬指導でこれを口にすると、「えっ?」という顔をされることも多い。まだ一般人への普及は進んでおらず、「それ何? ハーブなの?」という程度の認知度なのである。ここで少し、セントジョーンズワートについての予備知識に触れておこう。

 ・オトギリソウ科植物の、開花期に収穫した地上部

 ・自律神経失調症、抑うつ、不安や緊張などに使用される

 ・外科的には急性外傷や挫傷、筋肉痛、火傷に使用される

 ・CYP3A41A2を誘導し、これらの基質となっている薬剤の代謝を促進させる。

 ・効果を得るためには、数週間から数ヶ月の摂取が望ましい

 ・聖ヨハネの草、という意味があるらしい(セント・ジョンが名前の由来?)

 

 それにしても医療業界に出てくる単語というものは覚えにくく長い名前が多いものだ。セントジョーンズワートも然り、スティーブンジョンソン症候群、レストレスレッグス症候群、インフォームド・コンセント、などなど。

 新人薬剤師はこのような難解な単語を必死で覚え、時には間違えながらも習得していく。恥ずかしがらなくてもいい。始めは誰だって「スティーブジョブズ症候群」「レストレッグス症候群」「インフォメーション・コンセプト」などという間違えを乗り越えて覚えていくものだ。プリンペランを「プリンプリン」と間違えていた私の羞恥を思えば、多少の言い間違いなど怖くない。そんなことはどうでもいい。さて話を戻そう。

 今はセントジョーンズワートだ。

 サプリメントで気軽に購入できるため、試しに数週間飲んでみたことがある。正直、それほど効果が実感できなかった。ストレス軽減に良いかと思ったが、どうやら私のストレス負荷はセントジョーンズワート程度で払拭できるほど生易しいものではなかったらしい。

 代謝酵素誘導の程度は「強い」とされる。これは、CYP3A4での代謝の寄与が大きい薬剤であれば、AUC5分の1程度にまで低下する可能性があるレベルだ。グレープフルーツジュースも侮れない。こちらはCYP3A4の阻害だが、やはりCYP3A4での代謝の寄与が大きい薬剤では、AUC5倍以上に増加する可能性がある。

 効果減弱のセントジョーンズワート。効果増強のグレープフルーツジュース。せめてこれくらいは覚えておきたい。ただ、何でもかんでも「他の薬と一緒に飲むのは止めましょう」では能がない。禁止を指導するのは容易だが、無駄に患者の禁止事項を増やす必要はない。これら食品やハーブのポイントを押さえ、「これなら一緒に飲んでも大丈夫ですよ」と安心してもらうことも、一人前の薬剤師の仕事と言える。

2016年2月13日 (土)

026 金ハル/銀ハル 【きん-はる/ぎん-はる】

金ハル=ハルシオン錠0.125mg、 銀ハル=ハルシオン錠0.25mgのこと。


【使用例】
① Aさん、金ハルじゃなくて銀ハルの方だよ。規格に注意して。
② 就職して1週間で、Aさんは銀ハル導入となった。


【解説】
金色のパッケージにちなんで、ハルシオンの0.125㎎を「金ハル」、同じく銀色のパッケージである0.25㎎は「銀ハル」と呼ばれる。
なぜ規格の小さいものが「金」で大きいものを「銀」に設定したのか、その理由は定かではないが、どのみち医療者の間ではあまり普及していない。
睡眠薬を使い慣れた一部の患者間で、ある意味<隠語>として使用されるケースがある。

ちなみに「ハルシオン」の名前の由来は、
<風と波を静め、穏やかな海にする不思議な力を持つ古代ギリシャの伝説の鳥、Halcyon に由来して>(インタビューフォームより)
ということらしい。捻りもなく、伝説の鳥の名前をそのまま戴いているとは何とも怖れ多い。


【新解釈】
パッケージの色を盛り込むのは、誤薬防止の観点からも新しい試みである。「ハルシオン0.125mg」と「ハルシオン0.25mg」だとどうしても間違いやすいため、規格間違いのリスクは高い。このため、正式名称を「金ハルシオン0.125mg」「銀ハルシオン0.25mg」と改名することをお奨めしたい。


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2016年1月14日 (木)

021 RCC 【あーる・しー・しー】

赤血球濃厚液(Red cell Concentrates)の略称。


【解説】
血小板輸血や血漿輸血もあるが、一般的に輸血と言えば赤血球濃厚液、RCCを指すことが多い。使用量は単位で表され、1単位140mlである。重度貧血や大出血のリスクがある手術時などに頻用されている。
ちなみに血小板はPC、血漿はFFPと略されることが多いので、新人薬剤師にはぜひとも覚えておいていただきたい。


【新解釈】
なお、RCCを【retort chicken curry】、すなわちレトルトチキンカレーと翻訳する連中も少なくない。医療業界における略称の安易な使用は、こうした危険を孕んでいることを念頭に置き、
「RCC4単位、至急でお願いします」と言われた際に、「赤血球濃厚液の輸血ですか? それともレトルトチキンカレーの温めですか?」と確認する機転を見せたいところだ。


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2016年1月 4日 (月)

018 塩 【しお】

塩化ナトリウムの一般呼称。まれに、地域限定ではあるが、モルヒネ塩酸塩を指すこともある。


【例文】
① 血清ナトリウムが低いので、――を3g追加してみましょう。
② 薬剤師さん、これから今日使う――を取りにいきます。


【解説】
電解質の中でも最も馴染みあるものが、ナトリウムではないだろうか。家庭用としては食塩、医療用としては塩化ナトリウムとして頻用されている。医療界での略称が<ナトリウム>ではなく<塩>なのは、あまりに生活に密着した電解質であり、その方がわかりやすいからだろう。

さて、問題はもう一つの隠語の方である。モルヒネ塩酸塩を<塩モヒ>と略すのはわかる。先述したやくざいし語録17 リンコデと同じ理屈だからだ。ただ、一部地域、しかも一部の医療者に限り、モルヒネ塩酸塩を<塩(しお)>と呼ぶことがある。
紛らわしい略語は、本来避けるべきである。しかし、医療過誤の温床とも言うべき由々しき事態において、塩(しお)=モルヒネ塩酸塩という構図を知らない者が、あたかも無知であるという烙印を押されることがある。こうした理不尽が、塩対応という言葉を生んだという。


【新解釈】
ごく限られた場所で使用される略称を、まるで公用語のごとく堂々と使用する者を、<医の中の蛙>と揶揄することもある。


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2015年12月30日 (水)

017 リンコデ 【りん-こで】

コデインリン酸塩の略称。かつての名称はリン酸コデイン。


【例文】
① あの患者さん、咳がひどいから――を昼から開始します。
② あの患者さん、下痢がひどいから――を夕から開始します。


【解説】
一般的に広く普及している略称の一つである。かつてはリン酸コデインという名称だったが、現在では<リン酸塩>の部分を後付けにして、<コデインリン酸塩>が正式名称となった。
そのため、臨床の場で今後の略称をどうするか、軽い混乱が生じている。
最も多いのは現状維持派、倒置法になってもお構いなし、<リンコデ>を貫き通す意見である。そのほか、徐々に勢力を拡大しつつあるのが<コデイン>派である。そもそもリン酸塩という部分はおまけであり、特にこだわる必要はなく、だったら重要な名称部分のみで良いではないか、というのがコデイン派の至極まっとうな意見である。
なお、少数派ではあるが、<コデリン>と略す輩もいるようだ。恥ずかしいのでぜひとも止めていただきたい。

同様に<塩モヒ>問題も勃発しているのだが、これはまた事情が複雑であり一筋縄ではいかないので、後述することとする。


【新解釈】
新入職員からすると、どうしてコデインリン酸塩を<リンコデ>と呼んでいるのか、その経緯がわかりにくいかもしれない。本来は呼称を容易にするための略称なのに、その意味をわざわざ覚えなければならないなど本末転倒である。六本木をギロッポンとわざわざ言い換えるような、薬剤師の通ぶった痛々しさが、すでにリンコデという言葉には滲み出ている気がしてならない。


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2015年11月24日 (火)

002 メチコバール 【めちこばーる】

ビタミンB12製剤。成分名はメコバラミン、適応は末梢神経障害。

【例文】
① 原因不明のしびれに対して、――を処方して経過をみる。
② ――で胃が荒れるなんて、普通は考えられないですねぇ。



【解説】
メチコバールは、臨床現場で頻用されるビタミンB12製剤である。適応は末梢神経障害となっており漠然としているが、その用途は広い。しびれ、痛み、肩こり、腰痛、眼精疲労、はたまたビタミン欠乏による貧血や、アリムタ投与に先立っての血液障害予防にも使用される、極めて汎用性の広い薬剤なのである。

その一方で、メチコバール存在感の薄さは前々から問題になっていた。高齢者や嚥下に問題ある症例において薬剤を減らすとなった時に、まず真っ先に候補に挙がるのがメチコバールである。
発疹や胃部不快感、下痢症状などが出た場合に、被疑薬として考えられることはまずない。あったとしても、順序としては最後である。
そんな雑な扱いにも関わらず、市場から一向になくならないロングセラー薬品であることは医療界七不思議のひとつに数えられている。

メチコバールが著効した時の、周囲の反応は極めて高い。「下手な鉄砲撃ちも数打ちゃ当たる」とはよく言ったもので、「たかがメチコバールもたまには役に立つ」というわけだ。

多くの医療者にとって、メチコバールとは、他剤との相互作用がほとんどなく、副作用もほとんどない、誰もが無難に安心して使えるという認識である。 悪いように言うならば、「弱い」「居ても居なくても同じ」「割り勘要因」という意味になることもある。 存在感の薄い人間を揶揄して、「メチ雄」「メチ子」などと呼ぶことがあるが、ぜひとも止めていただきたい。


【新解釈】
「無害な」「当たり障りの無い」、そんな、クラスに2~3人はいる存在、それがメチコバールである。ただ、そんな彼ら彼女らも、たまーに球技大会で活躍したりするのを忘れないように。


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