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2016年12月27日 (火)

031 毒殺 【どく-さつ】

毒物を用いて殺人を行なうこと。
サスペンスドラマやミステリー小説で多く用いられる殺害方法。


【使用例】
① これは自殺ではなく、――の可能性があります。
② 病院薬剤師のAなら、毒物を手に入れて被害者を――することだってできたはずだ。


【解説】
日本ミステリー協会において『毒殺のための毒物使用ガイドライン』が発行され、物議を呼んでいる。その中で紹介されている<理想的毒物の条件>には全7項目記載があるのだが、我々薬剤師に言わせると首を捻るものばかりである。以下、全文を記載する。


1.少量で致死性が高いこと。

持ち運びの観点からも、毒物はできるだけ少量で効果が出ることが望ましい。固形であればシュガーポットに一振りし、小さじ一杯の摂取で毒性が発揮されること、液体であればワイングラス1杯に対して1滴を注入し、一口の摂取で毒性が発揮されることが理想的である。


2.臭いや味がないこと。

毒物単体を摂取させることは非常に困難であり、通常は食べ物や飲み物に混入する。毒物自体に特異な臭いや味がある場合、混入に気付かれてしまう恐れもある。このため、できるだけ無味無臭のものを選ぶ。


3.拮抗薬が存在すること。

殺害のみを目的とした場合には毒物の拮抗薬の存在はマイナスになる可能性があるが、誤って別の人が毒物を摂取してしまった場合の救出方法は考慮すべきである。また、自らはあらかじめ拮抗薬を摂取しておき、ターゲットと同時に毒物を摂取するという荒業も行なうことができる。
殺害ではなく交渉を目的とした毒物使用の場合には、毒物を飲ませた後に拮抗薬をちらつかせて有利に事を運ぶこともできる。ただしこの場合、拮抗薬とは名ばかりの偽物であっても良い。


4.超短時間で効果が発現すること。

毒物を摂取した瞬間に口から血を出し悶絶死することが、ミステリー界の毒殺における醍醐味である。また、ラストシーンで犯行が露呈され、服薬自殺を遂行する場合にも、飲んでからすぐ効かないのでは興醒めだ。遅効性を期待するのは吸収や分布、代謝排泄の点から考えると個人差が激しく推奨されない。やむを得ず用いる場合は、溶出時間のはっきりしたカプセル等に毒物を入れ対応する。


5.体内から検出されないこと。

完全犯罪を目指すのであればこの条件は外せない。ただし、ベテラン刑事に疑われる要素を一つは残しておくこと。疑われる要素とは、例えば「若い健康的な男性が突然心不全で死亡した」などである。これがないとミステリーが成り立たないので注意すること。


6.複雑性を有すること。

複雑性とは、すなわち「あるものと一緒に飲むことで毒性を発揮する」「特定の状態下にある者だけに毒性を発揮する」などという設定のことである。同じ毒物を複数人が飲んだはずなのに死んだのは一人だけ、などというミステリー性を演出するための条件として重宝される。一方で、乱用すると「ご都合主義」などと批判が来るので注意すること。


7.背景に薬剤師をチラつかせること。

一般人は毒物への知識に疎く、また容易に手に入れることもできない。その点、協力者に薬剤師や薬学生を登場させれば信憑性はぐんと上がる。入手経路は病院や研究所、大学からということにすればいい。ただし、職業は冒頭で明らかにしてはならない。勘のいい視聴者は、薬剤師や薬学生が登場しただけで犯人と殺害方法を言い当てるという。



【新解釈】
こうした日本ミステリー協会の<理想的毒物の条件>に対し、大きく異を唱えているのが他ならぬ薬剤師である。
曰く、「ミステリー界は薬剤師に期待をかけ過ぎている」ということである。現実の薬剤師はご都合主義の毒物入手など容易ではないし、毒物の知識に長けているわけでもない。まして頻繁に犯罪者に手を貸しているわけでもない。
ミステリー界での活躍に嫌気が差した薬剤師は、近年ではサスペンスドラマではなく、医療ドラマでの活躍を切望しているが、実現までは至っていない。
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